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2018-09-26

シルク制作日記1 闇と光と、それから私

    鳩棲舎の舎員、清野ちさとがお送りする、ゆるーい制作日記のページです。   商品や作品がどのように作られているのか、   なんとなーくわかります。       鳩棲舎が大好きだって言うそこの君と、   暇で暇でしょうがない、っていう君にオススメの記事です!   今回は「2019年カレンダー」の表紙の制作を振り返ってみます。Let’s  Go  !      
      2017年の秋、新しい商品のひらめきは、   脳天の中に稲妻がはしるみたいにして、目の前に現れたのでした!!       私「ねえねえ!!やっぱりカレンダーは12枚毎月違う絵柄出てくるのが嬉しくない?透明なフィルムにねこうさ赤のインクでね2019って文字をさシルクスクリーンでバーーーーーーーーーン!!と・・・」   舎員K「ちょ、ちょっと待って!・・・えっとさ、なんの話?」   私「あ、私、作ろうと思ってるんだ!2019年のカレンダー!」   舎員K「えっそうなの?知らなかったよ!」   私「ごめんごめん、ですよねー!」       という、完全にひとりよがりなマシンガントークではじまった、カレンダープロジェクト。   大興奮状態で思いついたのは、   表紙を「シルクスクリーン」(略してシルクって呼んでね)という版画技法で刷ること。    

今回カレンダーの表紙、完成作品はこちら!

      なぜかって?   シルクで刷ったものって、とっても鮮やかで綺麗だからなんです。   新年を鮮やかな色でお祝いしたいな!   めくる前とめくった後で、発見があるような遊び心のあるデザインにしたいな!       そんな理由で、透明なフィルムにシルクで刷るという、   シルクスクリーンど素人の私には、   難易度★★★★★な挑戦をすることになりました。       頼みの綱は舎員K(シルク経験者)。   舎員K「透明フィルムに印刷なんて私だってやったことないよ。」   私「大丈夫!君ならできる!」(私が言うセリフじゃない)       ムボーとよばれても!   うすらバカとよばれても!(だれも、いってない)   やったるJ!       試行錯誤した結果、戸惑いや失敗もたくさんありましたが、   勉強になったしとっても楽しかった!   何より、超・綺麗な表紙が出来上がった!   できあがった瞬間、思わず「すごい、売り物みたーい!!」を歓声をあげてしまいました。   (いや、それ売り物だから。)       今回は、「版」をつくる工程で行った、闇と光の儀式の様子を   ご紹介します!
   

1 枠に、細かいメッシュの布をテンション★アゲアゲで張る。

    専用の枠に、メッシュ状(網目状)になっている薄い布を張って「版のもと」を作ります。   ちなみにカレンダーの表紙はアルミでできた枠を使いましたが、都合上木枠です。   (ちゃんと写真撮っとけボケナスがあ!!)       この布ね、もともとシルク(絹)を使っていたんですって!   今はコストや機能性の点からテトロンとかっていう化学繊維がほとんどなんですって!   だからシルクスクリーンっていうのね!へぇー!(合コンで披露しよう)  
      メッシュ、ですからよくみると透けています。  
      指で押してみると、やつらものすごい力で押し返して来ます。ぐいん!ぐいん!   ものすごいテンション(張力)アゲアゲです。   (ここでご存知の方はぜひ、DJ OZMAの「アゲアゲEVERY⭐︎騎士」を思い出していただけますでしょうか。)   テンションが高いと、うまく刷れるのだそうで。         言われてみると、なにごともテンション高めにやるとうまくいっちゃうみたいなところ、ありますもんね。   ジャパネットたかたさんとか体現していらっしゃいますよね。  
      2 闇の液体を召喚する     部屋のカーテンを閉め、電気を消し、闇を作ります。   なぜなら光に当たると固まってしまうという、「闇の液体」を扱うからです。       彼は普段は台所の下にいます。   しめっぽくて、おちつくみたいです。       台所の下が妙にすっきりとしていますね。   なぜなら、撮影のために、他のガラクタを全部外に出したからです。   「お客様にみていただく」という意識が非常に高く、好感がもてますね。  
      さらに、舎員Kの手作り特製遮光ボックスに入っています。   道のど真ん中に置いてあったら、不審物感が半端ない外観です。  
    さあ、今こそめざめるのだ!         3 「版のもと」の表面に、「闇の液体」を塗る     「闇の液体」には唯一、当たっても大丈夫な色の光があります。       それは赤い光です。       というわけで、赤いセロハンで電気スタンドを覆い、   手元は見えるけれど、「闇の液体」は固まらない部屋、「DARK ROOM〜緋の暗室〜」をつくります。   この光、なんだか「破滅」のようなものを感じさせます。   滅びの予感に、興奮するお年頃の2人。  
      永遠の中学2年生憧れのDARK ROOMの中で、   1でつくった「版のもと」に、「闇の液体」をぬっていきます。       液体を塗るときは、パウンドケーキを焼くときの型によく似た専門の道具を使います。   この道具、専門の道具だからちょっとお値段がはるんです。   「パウンドケーキの型じゃダメなの?」   と舎員Kに聞いてみたら「ダメ」と一蹴されました。       下から上に向かって均一にぬります。   失敗すると洗い流してやり直しなので、慎重に・・・  
      息を止めて、緊張の数秒間。  
      最後のひと塗り!  
      フーッ、無事にうまくいきました。       裏表の両面を塗ったら、この部屋の中でしばらく乾かします。   ちなみにLEDの光とかでも大丈夫なんですけどね。   やだやだ赤い光がいい!         4 乾いたら、絵柄が印刷されたフィルムを貼り付ける     絵柄をフィルムに印刷したものを用意します。   はりつける絵柄は、専用のフィルムに、   遮光性の高い黒いインクで描いたり、   黒のトナーを使って印刷したりします。  
      ちなみに今回のカレンダーで使う絵柄は、   コンビニのマルチコピー機で専用のフィルムに印刷しました。   コンビニには大変お世話になっています。       この前セブンイレブンにて、   データがうまく印刷できなかったので店員さんに聞きました。   店員さんもわからなかったみたいで、   コピー機メーカーの富士ゼロックスに電話して聞いてくれました。   そして富士ゼロックスの社員さんと直接電話で喋って状況を説明するという、   とてもめずらしい体験をしました。   店員さんも社員さんもみんな超いい人でした。   こういうとき、人の優しさを感じますよね。   それにしても、コンビニに2時間近くもいたのは初めてです。   というわけで、私はセブンイレブンにある、   富士ゼロックス社製マルチコピー機にちょっと詳しいです。   (質問とかあればメールで聞いてくださいね!)       話を戻しましょう。       黒で印刷されている部分だけが、光を通さないようになっています。   これを乾かした「闇の液体」の上にセロハンテープか何かで貼り付けます。   こうすることで、       ・絵柄の部分は黒で塗りつぶされているので、光に当たらない (「闇の液体」が固まらない)   ・絵柄のない部分は光に当たる (「闇の液体」が固まる)       ようになります。         5 光の儀式   ここで登場するのが、我が家の秘密メカ「ぴかぴか」です。 (今名前つけたよ、わかりやすいね)  
      普段は畳の部屋で埃をかぶっているのですが、   シルクスクリーンの版を作るときには、なくてはならない相棒として活躍してくれます。   鳩棲舎の舎員Kが、1ヶ月をかけてつくりました。   舎員Kはどうやら「箱」みたいなものをきっちりとつくるのが好きみたいですね。       光る勇姿がいろんな意味でまぶしすぎるので、動画を撮ってみました。  

    ピッカーーーーーーーーーー!! (ピカチュウっぽい)   それにしても、どうでもいい動画ですね!   でもちょっとかっこよくないですか!?       木の箱の上に、くもりガラスの板でふたがしてあります。   箱の中には、蛍光灯が仕込まれています。       今の時代、あかりといえば蛍光灯よりもLEDが多くなってきていますが、   シルクスクリーンに必要な光は   紫外線を発する、蛍光灯やブラックライト、太陽光でないといけません。   紫外線って悪いところばかりがクローズアップされるけど、いいところもいっぱいあるんですよね。   私、あのこ嫌いじゃないなー。       4でつくったものを、「ぴかぴか」のガラス板の上に載せます。   浮いたりしないように、さらに上から、本などの重しを載せます。   重しの一番下は、重量が分散するよう、小さめの本などをたくさん置くようにします。   うちでは手頃な大きさの「マスターキートン」を愛用しています。  
      「ぴかぴか」のスイッチを入れて、一定時間待ちます。   長すぎても短すぎても、うまくいきません。   今回は4分でした。   光の強さや絵柄の細かさなどによって、最適な時間は変わるので、事前に何度もテストが必要です。  
    上の写真、旅先で集めた8つのオーブを使って   1000年の間、箱の中に封印されていた神を復活させる際に   箱の隙間から光が溢れてきた瞬間を切り取った写真に似ていますよね。       「闇の液体」は、刻一刻と化学変化を遂げています。   くわしいことは、知りません。   これ発案した人って頭いいんだろうな。   理系のクラスにいたのに、化学と物理と数学が壊滅的だった青春時代を思い出します。   私たちは固唾をのんで見守ります。       タイマーが鳴ったら、すぐに重しをどけます。   おふろへ、GO!GO!         6 固まっていない「闇の液体」の部分を、シャワーの水圧で洗い流す     光に当たらないよう注意して、急いでお風呂場にもっていき、一気にシャワーを当てます。   なんと!みるみる絵柄がうかびあがってくるではないか!!  

      「ぴかぴか」の光に当たっていなかった部分は、   「闇の液体」が固まっていないので、かんたんに落とすことができるのです。   この瞬間が、版作りの中でも、いちばんのハイライトでしょう。   一点、なぜ風呂場の掃除をしておかなかったのかが悔やまれます。       風呂場の電気の光に照らされて   「闇の液体」がじつは緑色だったことに、初めて気づきます。   光があるから、色があるんだなあと、実感する経験でした。   放っておくと闇に吸い込まれていく私ですが、   こんなとき、「光、いいね!」という気持ちになります。   闇には美しさがある。   光にも、ちがった美しさがある。   みんなちがって、みんないい。       さて、ここまでくれば、かなり版の完成に近づいてきました!       7 仕上げをして版が完成!       まれに、絵柄で隠していなかった場所の「闇の液体」が   きちんと固まっていなかったり、傷がついたりして、   予期せぬところに穴があいていることがあります。       こんなときは、「闇の液体」をうすめたもので、部分的に穴を塞ぎます。   放っておけば、その辺で光に当たって固まります。  
      また、インクを入れて刷るときは、   版のはじっこからインクが漏れ出したりしないように、テープで目張りをしておきます。       だいたいこのような仕上げをして終了です。   これでインクを通過するための穴があいた版が完成しました!    
    少しだけ「シルクスクリーン」の版がどのように作られているか、   おわかりいただけたでしょうか。   次回は「シルク制作日記2 勝手にオリンピック」です。       汗と涙と筋肉痛のつまった   にわかアスリートたちの熱い夏を引き続きお楽しみくださいね。            
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